誤嚥性肺炎 〜本当は怖いむせ返り〜
[誤嚥性肺炎 〜本当は怖いむせ返り〜]
最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学
テーマ: 『本当は怖いむせ返り〜静かなる悪魔〜』
A・Sさん(男性)/70歳(当時) 会社経営
東京の下町で、工作機械の小さな工場を経営するA・Sさん。
ある日、味噌汁を飲もうとして突然むせ返ってしまいました。
その時は、急いで飲み込んだためだと気にもかけていなかったのですが、
その後、さらなる異変が襲います。
<症状>
(1)むせ返り
(2)力が入らない
(3)倦怠感
(4)返事をする気力もない
(5)失禁
(6)爪が青黒くなる
(7)唇が青黒くなる
<病名>誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)
<なぜ、むせ返りから誤嚥性肺炎に?>
「誤嚥性肺炎」とは口の中の細菌が肺に入ってしまい、肺炎になる恐ろしい
病。
A・Sさんの場合、それは肺炎球菌という細菌でした。
空気中に存在する肺炎球菌は、呼吸とともに吸い込まれ、口の粘膜にとりつき
ます。
しかし通常は唾液に含まれる酵素が殺菌してしまうため、肺炎球菌は口の中
には残りません。
ところがA・Sさんの場合、高齢のため唾液の酵素が少なく、殺菌力が低下。
肺炎球菌が生き残ってしまったのです。
では、この肺炎球菌、一体いつ肺の中に侵入したのか?
その魔の瞬間こそ、あの「むせ返り」でした。
健康な人は、口の中に食べ物が入ると、脳の指令により「喉頭蓋」
(こうとうがい)というフタが気管の入り口を塞ぎ、誤って食物が入ることを
防いでいます。
しかしA・Sさんの場合、脳の指令が喉頭蓋に正しく伝わっていなかったの
です。
原因は高齢になると多くの人に起きる動脈硬化。
それが脳の細い血管で起きていました。
動脈硬化を起こした血管は時間が経つにつれ徐々に詰まっていきますが、
A・Sさんの脳ではそれがあちこちで起きていました。
そのため脳の指令が喉頭蓋に正しく伝わらなくなっていたのです。
その結果、気管の入り口にうまくフタをすることが出来ず、食べ物が誤って
流れ込む「誤嚥」という現象を起こしてしまいました。
そして起きたのが、あの「むせ返り」。
「むせ返り」は間違って気管に入った異物を吐き出すために必要な反応
ですが、A・Sさんは高齢のため、吐き出す力が弱く、味噌汁が気管の奥へ
流れ込んでしまったのです。
入ったのは口を通る際に肺炎球菌をたっぷり含んでしまった味噌汁。
しかもこの時、A・Sさんは仕事が忙しく、身体に無理を重ね、抵抗力が
弱まっていました。
そのため肺に入りこんだ肺炎球菌はたちまち増殖、炎症を起こした結果、
様々な症状を引き起こしたのです。
最初力が入らなくなり、その後、ひどい倦怠感に襲われたのは、肺が炎症を
起こし、血液に酸素を十分送り込めなくなったのが原因。
全身の筋肉が酸素不足に陥り、運動能力が低下してしまったのです。
さらに妻の問いかけに返事をする気力もなくなり、ついには失禁してしまった
のは、脳を流れる血液の酸素が不足し、脳細胞の活動が低下していたせいで
した。
肺炎にも関わらず、高い熱や咳が出なかったのは、年をとって発熱などの体の
反応が鈍くなっていたため。
事実この病気にかかった高齢者の3人に1人は高熱や咳といった症状が出て
いません。
そのため、病気のサインを見落としてしまうことが多いのです。
その結果、A・Sさんの爪や唇は青黒く変色してしまいました。
これは血液中の酸素が異常に減り、血液の色が黒ずんだために起きた現象。
ここまで来ると、もはや肺は機能停止寸前。
ついには呼吸不全を起こし、帰らぬ人となってしまったのです。
現在、肺炎で死亡する人は、年間およそ9万5,000人。
うち96%が65歳以上の高齢者であり、そのほとんどが誤嚥性肺炎と言われて
います。
http://asahi.co.jp/hospital/