[皮膚 円形脱毛症:5 心地いいカツラで自分取り戻す]

(朝日新聞
  2010年12月25日)


円形脱毛症で髪の毛がほとんど抜けていた篠原有紀さん(38)は、娘(12)
を出産したころに黒い髪の毛が少しだけ生えたことがあった。
しかし、1年もたたずに再び抜けてしまい、カツラが手放せない状況が
続いた。


2005年に米国で暮らす母親を訪ねると、あるテレビ番組を録画してくれて
いた。
その映像を見て、衝撃を受けた。
脱毛症に悩む女性が、きれいな姿に変身。
どう見ても、カツラをしているとは思えなかった。

すぐにインターネットで探し、米カリフォルニア州の会社で頭の型取りをして
もらった。
7カ月後に完成したものをかぶると、今まで知らなかった感触に驚くほか
なかった。
頭にピッタリで、サラサラな感触。
人工皮膚は自然そのもので、髪の分け目も気にならない。
100万円もした大手メーカーのものと比べ、半額もしないのに同じカツラとは
思えないほどまったく違っていた。
ショートやロングヘアーのカツラで、ホットカーラーなどを使ってヘア
アレンジを楽しむようになった。
「人間って不思議。ばれないって分かると言いたくなるんですよ」
髪形を褒められると「これ、カツラなんです」と笑顔で言えるようにも
なった。隠すためのカツラが、見せるためのカツラに変わった。

皮膚に着色する「アートメーク」で抜けた眉毛を描くことで、プールで泳ぐ
ことも温泉につかることもできるようになった。
趣味のキックボクシングなどで体を動かしても、もう、カツラや眉毛の心配を
することはない。
自分らしい生活を、やっと取り戻せた。


いまは、脱毛症になってよかったと思っている。
ずっと暗闇の中にいるような、つらい日々を知っているからこそ、何げない
日常であってもすごく楽しい。

最近は同じ円形脱毛症で悩む人に、自分の体験を話すようになった。
カツラについての疑問、友だちとの旅行、つき合っている異性への告白、
そして、もし自分の子どもがなったら——。
切実な質問に答えることが、自分にしかできないことだと思っている。

娘と幸せな生活を続けている篠原さんの頭頂部に、2年ほど前から黒い
髪の毛が生えてきた。
理由はよくわからない。
いつかは生えてくるけれど、このままでもいい。
そんな気持ちでいられることが、発毛には1番大事なのかも知れない。
いまは、そんな気がしている。




http://www.asahi.com/health/ikiru/TKY201012250143.html
   

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