[引き取り手待つ身元不明遺体、全国で1万6000体]
(朝日新聞 2009年12月22日)
自死を選んだ失職者とみられる男性、繁華街で転落死した密入国者らしい
女性・・・・・。
警察が身元不明と判断した遺体の数は科学捜査の進歩で年々減っているが、
全国ではなお約1万6,000体が引き取り手を待つ。
愛知県では、県警がホームページで情報提供を呼びかけ始めて丸1年に
なるが、有力情報はゼロ。
約700体がひっそりと「寒い冬」を迎えている。
名古屋市熱田区の県営公園で中年男性が木からベルトを下げ、首をつって
死んでいるのが見つかった。
今年初めのことだ。
清潔なワイシャツにジャンパー、スラックス姿。足元の黒革のビジネスバッグ
には、電気カミソリや毛穴パック、リップクリーム、つめ切り、毛抜き、
ハンカチ、ハンドタオルが入っていた。
所持金類は13円とテレホンカード2枚。
熱田署は周辺の聞き込みや指紋、「歯の治療跡の捜査」などを続けたが、
誰かを特定できず、身元不明遺体と判断した。
身なりや、身だしなみを整えるための持ち物から、同署は直近まで職に就いて
いたとみる。
幹部は「再就職もままならず、人生を悲観したのでは。天涯孤独の身なの
だろう」という。
東海地区最大の歓楽街、名古屋・栄地区。中層ビルに囲まれたコイン式駐車場
では昨年1月、若い女性が仰向けで失血死していた。
隣の6階建てビルの屋上で履いていたハイヒールの足跡が見つかり、転落死と
判断されたが、やはり身元はわからなかった。
若い女性の身元不明遺体は極めてまれだ。連絡が取れなくなるとすぐに家族や
友人が警察に届け出たり、問い合わせたりするからだ。
中署は外国人の可能性を考えて入国管理記録にも当たったが、一致する指紋は
なかった。
捜査幹部は、女性が密入国者の可能性もあるとみている。
県警によると、かつては長く路上生活をしていたとみられる人の遺体が
多かったが、近年は仕事についていたとみられる人が目立つという。
警察は2〜8週間、捜査を尽くしても身元が判明しなかった遺体は、自治体に
引き渡す。
一方で殺人罪の公訴時効の25年間、記録を保存して、遺族を探す。
自治体は遺体を火葬後、「一時預かり」の形で霊場に収める。
遺留品の一部も保管している。
警察庁と同県警によると、DNA検査を始めとする捜査手法の進歩や検視態勢の
強化を背景に、1年間で身元不明と判断された遺体の数は、全国では1999年
の1,847件から2008年は1,019件に、愛知県では2001年の68件をピークに、
2008年は37件に減った。
それでも、記録の保存期間に遺族が見つかっていない身元不明遺体はそれぞれ
1万6,622件、693件(いずれも2008年末現在)に上る。
県警は昨年12月から、身元不明遺体に関する一部情報を、ホームページ
(http://www.pref.aichi.jp/police/jiken/fumei/index.html)に掲載する
取り組みを始めた。
だが、これまで身元確認に結びついた例はない。
鑑識課は「家庭事情が複雑で、身内と思い当たっても引き取りに現れない
遺族も多いようだ」。
今年は11月末現在で身元が判明したのは3件。
のまま引き取り手が見つからなければ、今年は計37件が時効を迎え、県内
各地の公営霊園などで無縁仏になる。
(豊岡亮、角拓哉)
http://www.asahi.com/national/update/1222/NGY200912220003.html