カテゴリー : ヒトヘルペスウイルス科

新生児300人に1人が感染 サイトメガロウイルス

[新生児300人に1人が感染 サイトメガロウイルス、福医大など全国調査]

(福島民報  2010年12月21日)


妊婦を通して胎児が感染すると難聴や発達障害を引き起こす危険性がある
「サイトメガロウイルス」に、新生児の300人に1人が感染していることが、
福島県の福島医大を含む全国の研究機関による国内初の大規模調査で
分かった。


同ウイルスは成人で感染しても影響はほとんどないが、胎児が感染すると
2割で異常が生じるとされている。
早期に感染が確認されれば対処方法も考えられることから、同大などの
各機関は有効な検査や治療のガイドラインの作成を検討する。


全国調査は、福島医大が独自に県内の難聴者を調べた結果がきっかけで実施
された。
同大で難聴者のへその緒の遺伝子を調べところ、約15%が胎児期にサイト
メガロウイルスに感染していた。

難聴者の追跡調査は国内初めてで、同大独自の判定方法によって実現した。
同ウイルスの胎児への感染とその影響の解明を大きく前進させた。

さらに今回の全国調査によって感染実態がデータで裏付けられたことで、
同大は手洗いをしっかりしたり、口移しをやめたりするなど妊婦の感染
予防策やウイルスそのものに対する理解を広めていきたいとしている。

また早期に感染を確認できれば、抗ウイルス薬投与などの治療の他、人工
内耳の活用や言語訓練などでハンディを最小限に食い止めることもできると
いう。


調査には同大の微生物学、耳鼻咽喉科学、産科婦人科学、小児科学の各講座が
携わった。
中心的役割を果たした錫谷達夫微生物学講座教授(52)は「早期対応が重要。
聴覚異常を確認したら速やかに感染が原因かを調べることで有効な治療に
結び付く」と話している。


全国調査は厚生労働省の事業として県内の4医療機関を含む25機関で平成
20年10月から今年7月までに生まれた新生児2万1,272人を対象に実施した。
0.3%に当たる66人が感染し、経過観察で15人に難聴や発達障害の症状が出て
いる。

県内の対象は2,940人で、0.2%に当たる5人が感染していた。
うち新生児1人が生後6カ月で聴覚障害を発症、福島医大が抗ウイルス薬
投与を6週間続けた結果、聴覚が回復した。



<サイトメガロウイルス>
ヒトヘルペスウイルスの一種で、日本人は20〜30歳までに70%程度が感染
する。
健康体で感染してもほとんど発症しない。
しかし、妊婦が感染すると、胎盤を通じ胎児に感染し、感染した胎児の2割
程度に異常が生じるとされる。
出生時は無症状でも後から難聴、発達障害などの症状が現れることがある。
胎盤以外に唾液や母乳、精液、尿などを介して人から人に感染する。


http://www.minpo.jp/view.php?pageId=4107&blockId=9765905&newsMode=article 


難聴起こすウイルス、新生児300人に1人感染 厚労省

[難聴起こすウイルス、新生児300人に1人感染 厚労省]

(朝日新聞  2010年11月2日)


胎児の時に感染すると難聴や脳に障害が起きる危険性のある「サイトメガロ
ウイルス」に、新生児300人に1人の割合で感染していることがわかった。
厚生労働省の研究班が新生児2万人以上を対象に国内初の大規模な調査を
した。
抗体のない妊婦が感染すると胎児に感染することがある。

通常は幼児期に感染し抗体があるが、最近は抗体のない妊婦が3人に1人
程度と増えている。
胎児の感染も増加する可能性がある。


研究班は全国25施設で生まれた新生児2万1,272人(2010年7月末時点)を
調査。
尿を採取してウイルスの有無を検査し、66人が陽性と判明した。
幼児期に感染しても症状が出ず、胎内感染でも多くは発症しないが、うち
15人に難聴や脳の発達異常など典型的な症状が見られた。

今回の調査で陽性だった新生児のうち47人を調べたところ、31人は上に兄か
姉がいて多くから同じウイルス株が見つかった。
自然に感染した上の子から、妊娠中の母親が初感染し、それが胎児に感染
したと推測されるという。


この抗体を持っている妊婦の割合は年々低下している。
1986年の国内での調査報告では96%が抗体を持っていたが、今回調査した
妊婦4,306人のうち、確実に抗体があるのは66%だった。
衛生環境の改善などで幼児期の感染が減ったためとみられる。


研究班は先天性感染児への治療ガイドラインも検討。
抗ウイルス薬を6週間投与することで改善する例もあり、難聴も早期に発見し
補聴器をつけることで言語発達への影響を少なくできるという。


研究班代表の古谷野伸・旭川医科大講師は、感染したばかりの乳幼児の尿や
唾液にはウイルスが多く含まれているため、妊婦はおむつを取りかえた後には
手洗いし、口移しやキスなどを避けるよう呼びかけている。


サイトメガロウイルスは、同様に胎児に母子感染症を起こす風疹などとは
違い、感染しても妊婦にはっきりした症状がないため気づきにくい。

古谷野さんは「これまで難聴などの障害があっても原因がわからず、遺伝的な
病気と悩んでいた家族もいたが、サイトメガロウイルスが原因の場合も多い」
と指摘する。
(香取啓介)


http://www.asahi.com/health/news/OSK201011020051.html
    

ヘルペス:感染の仕組み解明--東大チーム

[ヘルペス:感染の仕組み解明--東大チーム]

(毎日新聞  2010年10月17日)


唇の周りに赤い水ぶくれができる「口唇ヘルペス」や性感染症などを起こす
ヘルペスウイルスが、人に感染する仕組みを、川口寧(東京大准教授
(ウイルス学)のチームが解明した。

詳しい感染の仕組みが謎でワクチンは未開発だった。
この成果をマウスに応用し、感染を防ぐことに成功したという。

英科学誌ネイチャーに発表した。


感染は、ウイルスが細胞表面に分布するタンパク質と結合することで成立
する。

チームは、ヘルペスウイルスではタンパク質の正体が不明だったため、特殊な
顕微鏡を使い感染の様子を探った。
その結果、ウイルスが細胞に侵入しようとすると、細胞内部からタンパク質が
表面に現れ、ウイルスと結びつくことを突き止めた。
また、タンパク質が現れるのは特定の酵素が働くためだった。

この酵素の働きを抑える化学物質を、感染したマウスに投与すると、未投与の
マウスと比べて致死率が半減した。
【関東晋慈】


http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/10/17/20101017ddm041040056000c.html


顔面神経麻痺:6 情報編 慎重に診断、早期に治療を

[顔面神経麻痺:6 情報編 慎重に診断、早期に治療を]

(朝日新聞 2010年5月2日)


顔の側面には顔面神経が走っていて、表情や涙・唾液の分泌、味覚などに
かかわっている。

「ラムゼイ・ハント症候群」は、水疱瘡にかかった後、顔面神経の中に潜んで
いた「帯状疱疹ヘルペスウイルス」が再活性化して
生じる顔面神経麻痺だ。
脳梗塞などが原因で起こる中枢性麻痺に対し、末梢性麻痺と呼ばれる。
患者は10万人当たり約5人と推定され、男女差はなく、20代と50代に発症
ピークがある。
主な症状は
 (1)顔面麻痺
 (2)耳たぶや外耳道の帯状疱疹
 (3)めまい、耳鳴り、難聴
など。
ただし、これら3つがそろった「完全型」は全体の約6割で、(2)(3)を
伴わないもの、それぞれの症状が出るのに数日〜2週間の時間のずれがある
もの、発疹がはっきりせず、赤く腫れるだけで外耳炎などと区別しにくい
ものも多い。
ほかに頭痛や耳の痛み、聴覚過敏、味覚異常、涙の減少などが現れることも
ある。


末梢性顔面神経まひでは、「単純ヘルペスウイルス」の関与が指摘される
「ベル麻痺」が最も多い。
ベル麻痺は約7割が自然に治るとされるが、ラムゼイ・ハント症候群は
約3割にとどまる。


「異常があれば、すぐに受診してください。医師は慎重に診断しつつ、早期に
適切な治療を始めるべきです」と、いなば耳鼻咽喉科(横浜市)の稲葉鋭
院長はいう。


診断ではまず、脳梗塞などの病気がないことを確認する。
確定診断にはウイルスの抗体検査をするが、この病気が強く疑われる場合は、
症状をみながら治療を先行させる。
抗ウイルス薬でウイルス増殖を抑え、ステロイドで神経の炎症やむくみを
取り除く。
発症3日以内に治療を始めれば、7割以上完治するという報告もある。
神経を保護する薬や代謝をよくする薬、ビタミン剤も使う。

また、リハビリとして顔のマッサージやストレッチをする。
口を動かすと目も動くなどの「共同運動」を防ぐため、意識して目と口を
別々に動かすといった訓練をする。

必要に応じ、顔面神経が入る管を切開してむくみを軽減させる手術や、
上まぶたをつり上げるなどの形成手術をすることもある。

顔の麻痺は容貌や印象に影響を与え、生活の質(QOL)に大きくかかわる。
人と会うのを嫌って、外出を避けたり、仕事をやめてしまったりする人も
いる。
「心のケアも重要で、周囲の理解と支えが欠かせません」と稲葉さんは話す。

(五十嵐道子)

http://www.asahi.com/health/ikiru/TKY201005020148.html

顔面神経麻痺:5 してはいけないこと何もない

[顔面神経麻痺:5 してはいけないこと何もない]

(朝日新聞 2010年5月1日)


「ラムゼイ・ハント症候群」と診断されて半年ほどたった2009年春、
横浜市の本間京子さん(62)は回復を感じ始めた。
麻痺した顔の左半分が少しずつ動くようになった。

5月、夫の実さん(66)、娘の祐子さん(37)と箱根に行った。
病気になって初めての旅行。
不安はあったが、美術館をめぐり、温泉でのんびりした。
それが自信となって、秋には福島まで出かけ、紅葉を楽しんだ。
季節ごとに、自宅からほど近い鎌倉を夫婦で訪ね、散策した。
喫茶店で休憩し、コーヒーを飲む。
少しでも気分転換ができるようにという夫の気遣いを感じた。
体力が回復し、顔も徐々に動くようになっていった。

今年1月には結婚40年にグアム旅行を祐子さんがプレゼントしてくれた。
同窓会にも出席した。
京子さんが積極的になったのが、実さんはうれしかった。
何より表情が明るい。

主治医の稲葉鋭医師(51)が昨夏、市内で開業して、いまはそのクリニックに
通う。

3月。
2年前の秋に病気がわかった時に40点中4点しかなかった顔の動きが、30点
まで回復した。
ウインクができる、口笛を吹くみたいに口をすぼめられる。
聴力検査では左に軽い難聴があったが、右は正常だった。
「このくらいの聞こえづらさは日常生活ではまったく問題ありません。右の
聴力を大切にしていきましょう」
稲葉さんが言った。
「先生、習い事を再開してもいいですか」
京子さんは恐る恐る聞いた。
発症前、クラシックバレエを習っていた。
トーシューズは幼いころからの夢だった。
でも、まだめまいやふらつきがあるので、自信がなかった。
「してはいけないことは、何もありませんよ」
稲葉さんは笑顔で答えた。
「姿勢も良くなるし、いいリハビリになるでしょう。ただ、転倒には気を
つけて」と付け加えた。

まだ食べる時に口に不自由がある。
ものを噛むと、涙が出る。
耳鳴りも続いている。
けれど、できるだけ気にしないように努める。
「ストレスが1番いけないから」

朝食をつくるのは実さんだ。
パンとコーヒー、サラダ、果物。
台所に立ったこともなかった夫が、家事をこなし、ずっと支えてくれた。
どんなに感謝しても足りない。
1年半かかって、ここまで良くなった。
これからも少しずつ頑張っていこう、と思う。
4月初め。
食卓に、京子さんが焼いたパウンドケーキが加わった。
(五十嵐道子)

http://www.asahi.com/health/ikiru/TKY201005010216.html

顔面神経麻痺:4 夫の気遣い受け笑顔戻る

[顔面神経麻痺:4 夫の気遣い受け笑顔戻る]

(朝日新聞 2010年4月30日)


横浜市の本間京子さん(62)は、西横浜国際総合病院に通い、「ラムゼイ・
ハント症候群」の治療とリハビリを続けたが、なかなか症状が良くならな
かった。
2008年暮れ、自宅で目と口が一緒に動く「共同運動」が出た。

パニックになった京子さんを、夫の実さん(66)は何とか落ち着かせ、床に
就かせた。

先が見えないまま年が明けた。
京子さんは自分がだめになっていくと感じながら、たびたび実さんに
当たった。
実さんも、妻を受け止めなければとわかっていても、厳しく言ってしまう
ことがあった。
病気は恐ろしい。
実さんは思った。
明るくて、笑い声が絶えなかった家の中が、こんなにめちゃくちゃになって
しまうなんて。

月1回、大学病院でカウンセリングを受けた。
主治医の稲葉鋭・耳鼻咽喉科部長(51)=当時=も診察のたび、京子さんの
話に耳を傾け、声をかけた。
「前を向いて、ちゃんと座って。髪で隠さず、顔を上げよう」

京子さんは、実さんが夜、時々、台所で1人、じっと考え事をしているのを
知った。
2人は1970年に結婚した。
実さんが独立して、自分の会社を持ってからは、実さんが現場を仕切り、
京子さんが事務をして支えた。
娘の祐子さん(37)が生まれ、念願のマイホームを持った。
充実した毎日だった。

このままじゃいけない。何かしよう、何かしたい。
そんな気持ちが芽生えていった。

春のある日、実さんは京子さんをオセロゲームに誘った。
祐子さんが小さいころ、家族でよく遊んだ。
楽しいことに集中できれば、その間だけでも、病気を忘れられるのでは、との
思いからだった。
黒が実さん、白が京子さん。
「あら、負けちゃった」
京子さんが声をたてて笑った。
病気になって初めてだった。
「あ、いま、動いたよ」
京子さんの唇の左側が、ほんの少し動いたのを、実さんは見逃さなかった。
「ほんとう?」
何度も鏡を見た。
自分ではよくわからなかったが、うれしかった。
それからは、食べる時も、そばに鏡を置いて、顔を見ながら食べた。
いまは目を動かしている、いまは口、と意識して、集中するようにした。
本当にわずかずつだったが、京子さんも、見守る実さんも、回復を感じ始めて
いた。

http://www.asahi.com/health/ikiru/TKY201004300184.html

顔面神経麻痺:3 進まぬ回復 焦りと不安

[顔面神経麻痺:3 進まぬ回復 焦りと不安]

(朝日新聞 2010年4月29日)


顔面麻痺を起こして「ラムゼイ・ハント症候群」と診断された横浜市の本間
京子さん(62)は2008年9月、市内の西横浜国際総合病院で入院治療を
受け、月末に退院した。

自宅でほっとしたのもつかの間、不安が襲ってきた。
顔の左半分は麻痺したまま。
左目を閉じられない。
めまいも続いていた。

「焦らず、ゆっくり治していきましょう」
退院の際、稲葉鋭・耳鼻咽喉科部長(51)=当時=から、半年はかかる、と
言われた。
半年なんて、気が遠くなるようだった。


口の左半分が動かないので、食物を口に入れても、ぼろぼろこぼれてしまう。
ザザー、グワー、キーン。
いつから始まったのか。
耳鳴りは、隣にいる人にも聞こえるのではないかと思うほどだった。
特に朝起きた時が大きく、寝るのが怖くなった。
めまいがして、髪をとかせない。
まひもあるし、きっとひどい顔をしているのだろう。
でも、その時は、耳鳴りの方がつらかった。
これが一生続くなら、死んだほうがましだと感じた。

週2回、夫の実さん(66)が運転する車でリハビリに通ったが、効果はあまり
感じられなかった。
それどころか、悪くなっているのではないか。
帰り道、パニックになって、車から飛び出そうとすることもあった。
「ゆっくり治そうと言われただろう」
そのたびに実さんはドアを抑え、京子さんの体を抱え、稲葉医師の言葉を繰り
返した。

12月になると、京子さんは毎年、クリスマスの飾り付けを楽しみにしていた。
大きなツリーや色とりどりの照明。
だが、その年はとてもそんな気分になれなかった。

稲葉さんは心の専門家に相談した方がいいと考えた。
12月中旬、娘の祐子さん(37)も一緒に大学病院の精神科を訪ねた。
カウンセリングを受け、軽い抗うつ剤をもらった。
気持ちが少し落ち着いたように思えた。


ところが、大みそか、京子さんは鏡を見て叫び声を上げた。
目を動かそうとすると口が動く。
口を動かそうとすると、目が動いた。

「共同運動」
ラムゼイ・ハント症候群の後遺症の1つで、神経の炎症が回復
する際、別の回路とつながってしまうことがある、と聞かされていた。
後遺症だけは絶対に起こしちゃいけないと思っていた。
そのためにリハビリも頑張ってきた。
「もう、だめだ」
京子さんは辺りにあるものを手当たりしだい、壊した。

http://www.asahi.com/health/ikiru/TKY201004290166.html

顔面神経麻痺:2 左半分 全く動かなくなった

[顔面神経麻痺:2 左半分 全く動かなくなった]

(朝日新聞 2010年4月28日)


原因不明のめまいが続いていた横浜市の本間京子さん(62)は2008年9月、
顔の左半分に違和感を持った。
左耳の周辺に発疹があり、市内の西横浜国際総合病院で「ラムゼイ・ハント
症候群」と診断された。

水疱瘡の原因となる「帯状疱疹ヘルペスウイルス」が顔面神経を侵すために
起こる病気だった。
疲れやストレスを引き金に、体内に潜んでいたウイルスが再活性化した
ようだった。
顔の麻痺、耳の周囲の帯状疱疹、めまいや耳鳴り・難聴が主症状とされるが、
3つそろわない例や発疹がわかりづらい例、症状が出るのに時間差がある例も
多く、診断は難しい。
京子さんも、顔のまひに先行してめまいが現れ、発疹は遅れて見つかった。


耳鼻咽喉科の稲葉鋭部長(3)=当時=は片目ずつつぶれるか、口をへの字に
できるかなど3項目について顔の動きを調べた。
40点中4点。
左はかろうじて目を軽く閉じられる程度で「完全麻痺」と呼ばれる状態
だった。
聴力検査をすると、左耳はほとんど聞こえなくなっていた。めまいがひどく、
京子さんは診察台に座っていることができなかった。

再びコンピューター断層撮影(CT)や磁気共鳴断層撮影(MRI)の検査を
し、脳卒中などのほかの病気がないことを確認した。

このウイルスの特定には約2週間かかる。
だが、結果を待っているうちに症状が進む心配があった。
増殖を抑える抗ウイルス薬の点滴と飲み薬による治療が、すぐに始まった。

通常は、神経の炎症やむくみを引かせるためにステロイドも併用する。
ただ、京子さんは不安や気持ちの落ち込みが激しく、副作用の抑うつが懸念
された。
最初はステロイドを使わず、めまいを抑える薬、代謝や血液の循環を良くする
薬、ビタミン剤などを飲んだ。
吐き気もあり、口からほとんど食べられなかったので、点滴で栄養を補給
した。
体重が10キロ近く減った。
少しでも食欲が出るように、夫の実さん(66)は毎日、京子さんの好きな
パンや果物を持って病院に来た。

顔の筋肉が固まるのを防ぐため、ベッドに寝たまま、看護師が顔をマッサージ
してくれた。
めまいが少し良くなると、車いすで、次は点滴台で体を支えて歩いて、
リハビリルームまで行き、マッサージを学んだ。
交感神経の働きを休める星状神経節ブロックや、電気刺激を受けた。
ステロイドも少し使った。
月末に退院。
通院治療に移った。

http://www.asahi.com/health/ikiru/TKY201004280245.html

顔面神経麻痺:1 最初はめまい、音が異様に響いた

[顔面神経麻痺:1 最初はめまい、音が異様に響いた]

(朝日新聞 2010年4月27日)


最初は、めまいだった。
2008年8月下旬。
横浜市に住む本間京子さん(62)は、いつもと違うめまいに不安を感じた。
ぐるぐる回る、というより、流れるような感覚。
障子の桟(さん)がぐにゃりと曲がり、壁も床もでこぼこに見えた。

2カ月前、夫の実さん(66)が車関係の会社の社長を引退した。
残務整理をしつつ、退職祝いに娘の祐子さん(37)と3人で海外旅行を
計画し、出発を心待ちにしていた。

「旅先で具合が悪くなったら困るから」
かかりつけの内科と耳鼻咽喉科のクリニックを受診したが、特に問題はないと
いう。
少し休めば良くなるだろう。
家で横になった。
だが数日たっても治まらない。
立っているのも座っているのも、寝ているのさえ、つらい。

たまらず、夜半、救急車を呼んだ。
病院でコンピューター断層撮影(CT)や磁気共鳴断層撮影(MRI)の検査を
したが、「脳に異常はありません」と言われた。

原因がわからないまま、自宅で療養を続けた。
家事ができず、ただ寝ているだけ。
異様に音に敏感になり、テレビの音も、台所で実さんが洗い物をする音も、
頭の中で割れるように響いた。
旅行はキャンセルした。

9月に入って、2階の寝室で寝ていた京子さんは、顔に違和感を持った。
重くて、だるい。
はうようにして階下の洗面所まで下りていき、鏡を見た。
顔の左半分から表情が消えていた。
目も口も、こわばっていた。

「私の顔、変じゃない?」
あわてて祐子さんに聞いた。

再び救急車で病院へ。
いったい何が起きたのか。
顔の左側を両手で必死に押さえた。
その時、同行した祐子さんが、京子さんの左耳の辺りに赤い発疹を見つけた。
「お母さん、何か出ている」

救急の医師も気づき、「これは、入院する必要があるかもしれません」と
言った。
いったん家に戻って、翌朝、通院していた耳鼻咽喉科に行った。
院長の意見も同じだった。
「すぐに大きな病院へ行ってください」

市内の西横浜国際総合病院を紹介され、実さんが運転する車で向かった。
顔面の麻痺、めまいと発疹。

稲葉鋭・耳鼻咽喉科部長(51)=当時=は、帯状疱疹ヘルペスウイルスが
引き起こす「ラムゼイ・ハント症候群」と診断した。
京子さんも、実さんも、聞いたことのない病名だった。
(五十嵐道子)

http://www.asahi.com/health/ikiru/TKY201004270196.html

乳がんリスクとEBウイルス遅い感染

[乳がんリスクとEBウイルス遅い感染]

(愛知県がんセンター研究所疫学・予防部  浜島信之先生)
「論文紹介:乳がんリスクと遅れたEpstein-Barrウイルス初感染」


乳がん発生はわが国で増加傾向にあるものの、その発生率は米国白人の3分の
1程度でしかない。
日系米国人は、白人と同じまたはそれ以上の発生率をもつことを考えると、
生殖歴の違いや食事の違いのみでは説明つかない大きな原因が潜んでいる
可能性がある。


Fred Hutchinson Cancer Research CenterのDr. Yutaka Yasui, PhDらは
15-34歳の「ホジキンリンパ腫」発生率と「乳がん」発生率の強い関連を
見出した。
世界のがん登録資料を用いれば相関係数は0.74、米国内のがん登録に限れば
0.88で、一見関係がなさそうなこの2つの悪性新生物は、他のどの悪性新生物
発生率間よりも強い相関を持つ。
そこに何らかの共通の原因があるのではないかと考えるのは疫学の常道で
ある。


ホジキンリンパ腫の原因の1つは「Epstein-Barrウイルス(EBウイルス)」の
感染である。
ほとんどの日本人は小児期に気づかれずにEBウイルスに感染し、成人に近く
なってから、もしくは成人になってから感染すると激しい症状があらわれ
「伝染性単核症」と診断させる。

Yasuiらは既報告の乳がん症例対照研究データを掘り起こし、伝染性単核症の
発生年齢について解析した。
その結果、感染既往歴を持っていない女性に比べ、0〜9歳に感染既往を
持った女性の乳がん相対危険度は0.55(95%信頼区間 0.05〜6.17)、25歳
以上で感染既往があった女性は2.67 (1.04〜6.89)であり、両者には5倍程度の
違いがあることを見出した。

彼らの仮説は以下の通りである。
 (1)EBウイルス感染が遅れると
 (2)宿主に強い反応を引き起こし
 (3)伝染性単核症患者のCTL機能に見られるような、
    またはホジキン病患者のEBウイルス抗体のプロファイルに見られる
    ような遷延した免疫刺激状態が生じる。
 (4)これはTNFαやIL-6のような前炎症性サイトカインの産生を促す。
 (5)これらサイトカインは脂肪組織のアロマターゼ活性を上昇させ、
    乳がんリスクを高める。


わが国では小児期にほとんどの人がEBウイルスに感染し、「ホジキン病」も
少なければ、「伝染性単核症」も少ない。
思春期や成人になってからの強い炎症を経験する女性が少ないから、
アロマターゼの活性化からのがれることができ、乳がんリスクが低い。

2世や3世の日系米国女性は米国白人と同じようにEBウイルス感染が遅れ、
米国白人と同様の高い乳がん発生率を持つことになる。

詳細な検討はもちろん必要ではあるが、この仮説はいくつかの現象をうまく
説明するのに
成功している。
わが国での食生活は欧米化し、生殖歴も大差がなくなっている。
しかし、米国白人との間の乳がん発生率差はまだ大きい。
日系米国人が米国白人と同じ乳がん発生率を持つことから、生活習慣や生活
環境が
乳がん発生に関与することは明らかであるが、どの要素が乳がん
リスクに関与するのか、探索する必要がある。

「遅れたEpstein-Barrウイルス初感染」説は魅力的な仮説の1つと言えよう。



http://www.aichi-med-u.ac.jp/jame/NL_Vol_3_No_3_%E8%AB%96%E6%96%87%E7%B4%B9%E4%BB%8B%EF%BC%9A%E4%B9%B3%E3%81%8C%E3%82%93%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%81%A8%E9%81%85%E3%82%8C%E3%81%9FEpstein-Barr%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9%E5%88%9D%E6%84%9F%E6%9F%93.htm   





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