[お口ポカン:要注意 病気や虫歯の恐れ、 フィルター・加湿機能持つ鼻]
(毎日新聞 2011年1月9日 東京朝刊)
電車の中などで、口を開きっ放しにしている子どもを見かけることがある。
人間は一般的に鼻で呼吸する。
口呼吸が癖になると細菌などを取り込みやすくなり、病気にかかるリスクが
増えるほか、歯の成長にも影響する。
インフルエンザや花粉が気になる季節に、子どもの「お口ポカン」問題を
考えてみた。
【中西拓司】
神戸市内の主婦(35)は4歳になる長男が、生後半年ごろから日常的に口を
開いていることが気がかりだ。
「たまに閉じることもあるが、寝ている時も含めていつも開いている」と
いい、歯がいつもむき出しになっているので、転倒した際に前歯が欠けた
こともあった。
口を開ける癖がない長女(7)に比べて虫歯になりやすく、すでに5本治療
した。
「口を閉じようね」と促しても、すぐに忘れて口を開けてしまう。
「健康にも悪そうなのですぐに直したい。
どうすればいいのか」と医師を受診したこともあった。
「恒常的に口呼吸しているようなら、早めに耳鼻咽喉科の診察を受けて
ほしい」。
千葉大大学院医学研究院の岡本美孝教授(耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍学)は
こう語る。
口呼吸が長引けば「のどの炎症や睡眠障害など、さまざまな病気を招く恐れが
ある」という。
鼻の内部には、左右それぞれに複雑な形をした3つの突起があり、表面の
粘膜や繊毛でホコリや微生物などの異物を取り除く働きがある。
また、のどを痛めないように外部の乾いた空気に湿り気を与え、温めてから
体内に取り込む加湿や加熱の機能もある。
鼻はにおいを感じる機能だけでなく、体内に異物が入るのを防ぐフィルターの
役目を果たしているというわけだ。
岡本教授によると、子どもが口呼吸する原因としてアレルギー性鼻炎などに
よる鼻づまりのほか、鼻の奥にある「アデノイド」の肥大などが考えられると
いう。
アデノイドは微生物に対する免疫力を作るリンパ組織の一種とみられており、
通常は3~4歳をピークに一時的に大きくなるが、その後は小さくなる。
しかし、炎症などによって腫れてしまうと鼻呼吸をしづらくなり、いつの
間にか口呼吸が習慣化する場合がある。
乳児用品メーカー「ピジョン」などが2001~2002年にかけて、2~23歳
までの約1,000人を対象に普段、口が閉じているかどうかを聞いたところ、
「閉じる習慣がついている」と答えた保護者や本人は39%だった。
一方、「いつも開いている」と答えた人は22%で、3歳以下では29%と
最も多く、13歳以上でも15%を占めていた。
口呼吸は歯の成長にも影響を与えると言われている。
ひかり歯科医院の三谷寧院長(歯学博士)は「口を開けたままにしておくと
唇や舌の位置が定まらず、歯並びも悪くなる恐れがある」と話す。
歯並びをよくするためには、
(1)唇を結ぶ
(2)上下の歯を軽く閉じている
(3)舌は上あご部分に触れる位置に落ち着いている
の3つの習慣を身につけることが重要だ。
三谷院長は「歯やあごなど顔面の成長が著しい3歳ぐらいまでに、習慣付けて
ほしい」と話す。
また、口呼吸は虫歯になるリスクも高い。
三谷院長は「口を開いたままだと口内が乾いて、唾液の循環が悪くなり、歯を
溶かす細菌が増えやすくなる」と指摘する。
歯を守るためにも早めに鼻呼吸を定着させたい。
<口笛、鼻歌で改善>
茨城県日立保健所は、独自の「お口ポカン度チェック」で、保護者に指導を
行っている。
1つでも思い当たれば、口呼吸が習慣になっている可能性があるという。
また、口を閉じる癖をつけさせる遊びなども勧めている。
同保健所の担当者は「口笛など遊びを通して鼻呼吸を習慣化させてほしい」と
呼び掛けている。
<お口ポカン度チェック>
・テレビを見ている時などに口が開いていませんか?
・のどがよく渇きませんか?
・口から歯や舌が見えていませんか?
・食事の際、くちゃくちゃ音をさせていませんか?
・歯ぐきが赤く腫れていませんか?
<口を閉じる習慣を身につけるには>
・口の中に空気を入れほおを膨らませる
・にらめっこ
・ハミング(鼻歌)
・口笛を練習する