[産科医解体新書(111) なぜダメ? 妊娠中の指輪]

(産経新聞 2010年11月2日)


妊娠してしばらくすると、助産師さんなどから指輪やピアスを外すように
言われます。
乙女心としてつけておきたい気持ちがあるのは分かりますが、やはり医療
従事者のアドバイスに従うのが賢明です。

妊娠後期になると、妊婦さんの体重は7キロから12キロほど増量します。
結婚したときには紅葉(もみじ)のようなかわいらしいお手々でも、
赤ちゃんを産むころにはヤツデの葉っぱみたいに大きくなるのです。

「薬指に指輪が食い込んでいても別に構わないじゃない」と思うかもしれま
せんが、分娩は何が起こるか分かりません。
緊急で帝王切開になることも想定しておく必要があります。
帝王切開のときには電気メスを使うこともありますので、もし指輪をつけた
ままだとその部分がやけどをしてしまう可能性があるのです。

同じ理由でピアスも外してもらわなければなりません。
最近は耳だけでなくおへそにピアスをする人も珍しくありませんし、眉や
舌など至る所にジャラジャラ装着しているサイボーグみたいな方も
いらっしゃいます。
恐らく空港の金属探知機にひっかかり、飛行機には乗れないのではないで
しょうか。
飛行機に乗れなくても僕らには関係ありませんが、緊急時には手術台に
乗ってもらわないと困りますから、やはり僕らの言うことは聞いてください。

最近のピアスはがっちり外れないようにできているものもあって、外してない
患者さんが緊急手術をしなければならないときはこちらが冷や冷やします。
時間がないときはリングカッターで切断しますので、大切なものはあらかじめ
外した方がよいでしょう。

もっとも分娩後、切断されたことを理由に新しい指輪を買ってもらう手も
あります。
その際、15号ぐらいのサイズになっているのに「私は本当は7号なの」と
言い張り、無理やりはめようとするのはおやめください。
出産後すぐは指がむくんでいることも多いので、おねだりをするのは少なく
とも1カ月健診が終わってからがよいと思います。
(産科医・ブロガー 田村正明)


http://sankei.jp.msn.com/life/body/101102/bdy1011020942003-n1.htm