[顔面神経麻痺:6 情報編 慎重に診断、早期に治療を]

(朝日新聞 2010年5月2日)


顔の側面には顔面神経が走っていて、表情や涙・唾液の分泌、味覚などに
かかわっている。

「ラムゼイ・ハント症候群」は、水疱瘡にかかった後、顔面神経の中に潜んで
いた「帯状疱疹ヘルペスウイルス」が再活性化して
生じる顔面神経麻痺だ。
脳梗塞などが原因で起こる中枢性麻痺に対し、末梢性麻痺と呼ばれる。
患者は10万人当たり約5人と推定され、男女差はなく、20代と50代に発症
ピークがある。
主な症状は
 (1)顔面麻痺
 (2)耳たぶや外耳道の帯状疱疹
 (3)めまい、耳鳴り、難聴
など。
ただし、これら3つがそろった「完全型」は全体の約6割で、(2)(3)を
伴わないもの、それぞれの症状が出るのに数日〜2週間の時間のずれがある
もの、発疹がはっきりせず、赤く腫れるだけで外耳炎などと区別しにくい
ものも多い。
ほかに頭痛や耳の痛み、聴覚過敏、味覚異常、涙の減少などが現れることも
ある。


末梢性顔面神経まひでは、「単純ヘルペスウイルス」の関与が指摘される
「ベル麻痺」が最も多い。
ベル麻痺は約7割が自然に治るとされるが、ラムゼイ・ハント症候群は
約3割にとどまる。


「異常があれば、すぐに受診してください。医師は慎重に診断しつつ、早期に
適切な治療を始めるべきです」と、いなば耳鼻咽喉科(横浜市)の稲葉鋭
院長はいう。


診断ではまず、脳梗塞などの病気がないことを確認する。
確定診断にはウイルスの抗体検査をするが、この病気が強く疑われる場合は、
症状をみながら治療を先行させる。
抗ウイルス薬でウイルス増殖を抑え、ステロイドで神経の炎症やむくみを
取り除く。
発症3日以内に治療を始めれば、7割以上完治するという報告もある。
神経を保護する薬や代謝をよくする薬、ビタミン剤も使う。

また、リハビリとして顔のマッサージやストレッチをする。
口を動かすと目も動くなどの「共同運動」を防ぐため、意識して目と口を
別々に動かすといった訓練をする。

必要に応じ、顔面神経が入る管を切開してむくみを軽減させる手術や、
上まぶたをつり上げるなどの形成手術をすることもある。

顔の麻痺は容貌や印象に影響を与え、生活の質(QOL)に大きくかかわる。
人と会うのを嫌って、外出を避けたり、仕事をやめてしまったりする人も
いる。
「心のケアも重要で、周囲の理解と支えが欠かせません」と稲葉さんは話す。

(五十嵐道子)

http://www.asahi.com/health/ikiru/TKY201005020148.html