顔面神経麻痺(2)リハビリは発症後すぐ
[顔面神経麻痺(2)リハビリは発症後すぐ]
( 読売新聞 2008年4月8日)
「重症の麻痺で後遺症が残るかと落ち込みました。でも、今ではだれも気づき
ません」。
東京都の歯科医A子さん(30)はそう話す。
2年前、突然頭から右耳にかけて痛み、翌朝、顔の右半分が動かなくなった。
大学時代に学んだ知識で、「顔面神経麻痺だ!」と直感した。
実家近くの大学病院の耳鼻咽喉科で治療を受けた。
担当医は「かなり重症。元通りになるかどうかわかりません」と話し、顔面
神経麻痺のリハビリを専門にする帝京大(東京都板橋区)リハビリテーション
科教授の栢森良二さんを紹介した。
栢森さんは「顔面神経は1日約1ミリずつ再生する。それを待つしかないが、
神経が再生する過程で、本来口元に届くべき神経が、まぶたにつながって
しまうこともある」と切り出した。
そうなると、口を動かすたびに片目が勝手に閉じてしまう。
「病的共同運動」と言い、麻痺が重いほど出る危険が高くなるという。
顔面神経は顔の表情を変える筋肉(表情筋)につながっている。
病的共同運動を防ぐには、「神経が再生している間、なるべく表情筋に負担を
かけないこと」と栢森さんは話す。
まず、大きく口を開けたりせず、表情をなるべく変えない。
頻繁に顔のマッサージをする。
麻痺した側は、顔の筋肉が縮んで硬くなるので、柔らかくほぐすようにもむ。
マッサージには、興奮した顔面神経を鎮める効果もあるという。
遠くを眺めて目を見開く練習も行う。
まぶたを上げる時には顔面神経を使わないので、思いっきり開けていい。
話す、食べるなど口を動かす時は、特に意識して目を見開く。
顔に電気刺激や低周波刺激を加える治療を一部の施設で勧めることがあるが、
逆効果なので受けてはいけない。
顎を上下に動かすだけなら顔面神経を使わないので、A子さんは、唇は
動かさず、上下の咀嚼だけで食事した。
発症から半年後、「もう普通に動かしても大丈夫」と言われるまでは、気分も
落ち込み、「うつになる一歩手前でした」と振り返る。
リハビリは発症後なるべく早く始め、「後遺症が出始める4か月までが特に
大切」(栢森さん)だ。
顔面神経まひのリハビリは、医師によって「顔に触ってはいけない」「顔の
筋肉を大きく動かす訓練をした方がいい」など意見が分かれる。
患者を多く診る栢森さんの経験では「顔の筋肉を動かす訓練をし過ぎると、
いったん麻痺は改善するが、長期的には後遺症が残りやすいと思う」と話す。
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20080408-OYT8T00188.htm