「舌も清掃して息さわやか」 元東京医科歯科大学教授エッセイ
「舌も清掃して息さわやか」
元東京医科歯科大学教授エッセイ
(読売新聞 2007年12月14日)
「阿吽(あうん)の呼吸」という言葉がある。
まあ正式な語源はともかくとして、もの言わずともお互い自然と相手の心が
わかることと理解されている。
私たちの年代は相手の気持ちを察知するというのは美徳であり、人間関係を
円滑に保つための大切な芸のひとつとされていた。
「男は黙って・・・・・」とか、「俺の背中を見ろ・・・・・」なんていう
言葉も自然と通用した時代である。
ところが、昨今、こんな話はほとんど通じない。
「ちゃんと言ってくれなきゃ分からないじゃないですか」などと言われて
しまう。
多民族からなる欧米先進国では、はっきりと意思を伝えないと分かって
もらえないし、自分の意見をはっきりと言えない人は、価値のない人のように
とらえられる。
「阿吽の呼吸」なんぞ望むべくもない。
対話が必要となれば、相手に好印象を与える努力も大切だ。
口臭など振りまいていては、話にもならない。
たばこの吸いすぎによるヤニ臭さ、二日酔いのアルコール臭、餃子食べ過ぎの
ニンニク臭などは論外だが、エチケットのひとつとしてさわやかな息を保ち
たい。
口臭の原因は、特別な内臓疾患の場合を除けば、多くは食べ物のカスと、
それらに群がる細菌の仕業と考えた方がよい。
つまり、口の中を丁寧に清掃しない、あるいは出来ない結果として起こる。
食べ物の残りカスに群がる細菌たちは、むし歯にも、歯周病にも、さらには
口臭の原因にもなっている。
そうなればやはり歯磨きが大切なのだが、もうひとつ、舌苔(ぜつたい)と
呼ばれる、舌の表面に無数にある溝に付く、白色の汚れを取り除かなくては
ならない。
その中身はむし歯や歯周病の原因となるプラーク(細菌の固まり)と同じ
なので、歯の周りだけを掃除しても口臭は治まらない。
一生懸命歯磨きに励んでいるのに、口臭がなくならないと言う人は舌の上を
掃除することをお薦めする。
幸い、舌ブラシとか、舌クリーナーとか呼ばれるものが市販されているので、
試してみるのもよいだろう。
また、最近では口臭に対する検査機器も発達して、かなりの精度で原因が判別
できる。
ひとりで悩んでいないで歯科医院を訪れて調べてもらうのがよい。
大学病院でも、「息さわやか外来」とか、「ブレスケア」とかきれいな
ネーミングがされ、気軽に行けるようになっている。
ちなみに口臭予防サプリメントなるものが数多く市販されているが、歯科医
から言わせれば、こういうものに頼るより歯科医院における清掃と、日常の手
入れの方がズーッと大切である。
もっと効果的なのは恋人ができるか、木村拓哉君なんかに、「歯がきれいな
子って、いいよね」なんていって頂くことなのですが・・・・・。
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